生体情報処理分野において生体モデルや処理モデルをソフトウェアで表現しシミュレーションすることは、ソフトウェア開発において要求仕様から設計仕様を作成し実現することに外ならない。しかし、未知の部分が多い生体情報では、モデル設計は容易ではなく、プロトタイピングアプローチにより模索することが多い。この方法はモデル設計後、ソフトウェアを開発し、シミュレーションするという時間の掛かる過程を踏まねばならない。そこで、実行可能なモデル記述言語を用意することで、モデル設計さえすれば即シミュレーションが行える環境が望まれる。本研究では、視覚性の高いモデルの記述を目標とした実行可能なモデル記述言語の開発を目的とした。本研究は、まずモデル記述言語の概念的な構成を仕上げ、基礎概念の在り方を他研究の基礎概念との比較により検証した。その結果、記述言語の基礎にあたるメタモデルにはあらゆるグラフを統一して扱える実体関連モデル(Entity Relationship Model)と実行可能性や再利用性を安易に与えるオブジェクト指向パラダイムを取り上げ、モデリングの観点の分割を図り、視覚性を高めるためにMVCモデル(Model-View-Controller Model)を導入した。これらの概念に基づいて基本設計さらに詳細設計を行い、計算機上に実行可能なモデル記述言語の処理系と支援環境を試作した。これは、メタモデルエディタ、シミュレータビルダ、モデルエディタ、モデルビルダなどから構成される。本研究のメタモデルにより、目的に応じたモデル記述言語を生成でき、それで記述されたモデルは実行可能なものとすることができる。現状において、支援環境は試作のため小さいモデルしか作れないが、メタモデルは充分な機能を有しているので、当初の目的の実行可能なモデル記述言語は開発できたと考える。
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