研究概要 |
ネットワークの信頼性計算をグラフ変更を用いて行なう手法は,近年広く知られているがその計算についての理論的解析は十分に行なわれていない.また,信頼性以外のネットワーク不変量計算へのグラフ変換の応用についても未だ知られていないことが多い.本研究の目的は,種々のネットワーク変量のグラフ変換による計算手法を開発し,実現及び理論的解析を行うことである.本年度は,以下の通りの研究実績を挙げた. 1.グラフ変換の定式化の容易なグラフの圏の発見 グラフ変換の理論的基盤となるグラフの圏においてプッシュアウトの存在条件を調べた.種々のグラフの定式化のうちプッシュアウトが常に存在する,すなわちグラフ変換が自由に定式化出来るグラフの圏を発見した.この成果は,圏論とその応用に関する雑誌(cahiers de topologie et geometrie differentielle categoriques)へ公表した. 2.グラフ変換における危険対の補題の証明 変換規則の適用順序を変えても計算結果が変化しないことを保証する危険対の補題を,項を表現する制限されたグラフ変換の定式化の下で証明した.この成果の一部は,情報基礎理論ワークショップにおいて公表した. 3.グラフ書き換え処理系の実現 グラフ変換を利用したアルゴリズム開発に不可欠なグラフ変換を計算機上で自由に実行出来るためのグラフィカル・ユーザ・インターフェース処理系を実現した.任意のグラフ変換規則を自動,または手動で適用していくことが出来る.また,危険対の探索およびその合流性の判定も行なうことが出来る.この成果の一部は,電気関係学会九州支部連合大会論文集において公表した. 4.信頼性以外のネットワーク不変量の計算手法の開発 直列並列ネットワークに対して,最短経路問題を頂点数に比例した計算時間で計算出来るグラフ変換を用いたアルゴリズムを発見した.この成果の一部は,応用数学合同研究集会報告集に公表した.
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