縮約法は連結度の高いグラフの性質を調べる際に有力な道具となる。本年度はこの縮約法を用いて、グラフのサイクル分布に関する問題の解決を試みた。またグラフに関する数学上の成果を情報科学の他分野に応用することも試みた。その研究実績は以下の通りである。 グラフのサイクル分布に関してLesniakは、最小次数が3以上であるグラフには長さが4の倍数になるサイクルが存在するだろうと予想した。本研究代表者はDean、Lesniakらと共にこの予想を解決した。この際、背理法の議論により、まず頂点数最小の反例の性質を調べ、そのグラフの連結度が高いことを導いた。そして縮約法により、矛盾を導いた。すなわちこの証明において縮約法は中心的な役割を果たした。今のところ縮約法を用いない証明は知られていないので、縮約法の有用性がここにおいても示されたことになる。 また本研究代表者は、グラフが非自明な誘導木に分解されるための必要十分条件を導いた。この証明においても縮約法は中心的な役割を果たしている。証明は構成的であり、この結果はグラフを効率的に木に分解するアルゴリズムも与えている。 さらに本研究代表者は、グラフの性質を秘密共有法とよばれる暗号法の1つに応用することに成功した。秘密共有法とは、1つの秘密情報を断片に分割して管理し、その1部が漏洩しても秘密そのものの機密性が保たれるようにする技術である。本代表者は、以前にもこの分野の研究を行ったが、今回はグラフの性質を使って、その時よりも効率の良い秘密共有法を構築した。
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