研究概要 |
本研究の目的は,複数の移動障害物が存在する環境で移動ロボットが移動する際のロボット周囲の状況とその帰結としての判断を学習し,利用できる能力をロボットにもたせることであった.すなわち,(1)移動障害物の軌跡が未知な状況で,ロボットのセンサ系で計測できる移動障害物の位置と速度ベクトルをもとに移動障害物が等速運動をするとして将来の位置を予測し,障害物と衝突しない経路の計画を移動平面に時間軸を加えた空間(時空)で行ない,これを短い時間間隔で繰り返す,(2)その繰り返しのたびごとに,ロボットのまわりの障害物のある瞬間の配置とその速度ベクトルを入力,対応する解経路を出力とみて学習・記憶し,現在の状況に類似のものが過去にあればそのときの解経路を利用すると,という枠組にもとづいたアルゴリズムを開発し,評価を行なった. 上記(1)を実現した計算機実験シミュレータを用い, 1.生成される解経路とそれの原因となるロボットの周囲の状況を考察し,どのようなパラメタをおけば学習可能かを考察した.すなわち,個々の状況を記憶せず,類似した状況がある種の距離で表現できるようなパラメタを見つけ,その記憶機構を考察した.使用頻度の低い過去の記憶の忘却などを盛り込んだ. 2.この学習機構を計算機上に実装し,シミュレーション実験を行なった.動作と計算量の負担,記憶量の負担などを調べた. 以上の実験から,学習を用いない場合に比べて経路計画に必要な計算量は軽減されたものの,過去に記憶したパラメタを探索するのに予想以上に時間がかかることがわかった.このため,効率の良い連想的な記憶機構を開発する必要があることがわかった.
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