モジュール型神経回路網モデルとして、対称結合をもつ相互結合型神経回路網を複数個結合したものを取り上げた。このようなモデルにおける各モジュールの活性ダイナミクスとモジュール間の結合ダイナミクスは、ネットワーク全体のエネルギー関数を定義することで与えらる。 本年度の研究は、このようなモデルの連想記憶能力をシミュレーション実験で定量的に評価することを目的とした。記銘するパターンとしては、各ビットが2値(±1)であるランダムベクトルを用い、総ニューロン数に対するパターン数(記憶率:r)で評価した。その結果、モジュール構造をもたない従来のホップフィールドネットに比べ、モジュール数が多すぎなければ、飛躍的に連想能力が向上することがわかった。例えば、総ニューロン数が500、モジュール数が2のとき、r=0.5で限界方向余弦d_C≒0.5、r=1.0でd_C≒0.7となった(ホップフィールドネットの場合、r≒0.2でd_C≒1.0となる)。さらに、与えられた問題に対して最適なモジュール数が存在し、それを越えると急速に連想能力が劣化する現象が見られた。この原因についての詳しい考察は、今後の課題とする。 また、ここで用いたモジュール型神経回路網には、モジュールの状態間に多対多の関係がある場合でもうまく動作するような機能を付加している。これは、2つのモジュール間の相互作用を決定する階層型ネットワーク(インターネット)に両モジュールの状態を入力することで実現している。本研究では、この機能がうまく動作することも、多対多関係をもつ文字パターン対を使った実験により確認している。
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