本研究の最終的な目標は、視覚障害者が音声のみをたよりに利用できるような情報検索システムの開発である。このようなシステムの実現のためには、基本的には既存の情報検索システムをそのまま利用し、インタフェースのみを視覚障害者向けに新たに作成する方法が最も効率的である。また、このインタフェースは、データベースの選択から検索条件の入力までを音声で誘導して行うためのナビゲーション部分と、検索結果を音声で提示するためのアナウンス部分に分けて考えることができる。そこで今回の研究では、音声合成ボードを組み込んだ32ビットのパーソナルコンピュータ上に、アナウンス部分のプロトタイプの構築を試みた。インタフェースの対象となる既存の情報検索システムとしては、NACSIS-IRを選んだ。 このプロトタイプでは、三つの機能を実現しようとした。すなわち、検索結果から書誌情報の部分のみを抽出し、それに必要な朗読文面を追加するためのテキスト変換機能と、特定の音声合成ソフトウェアによって音声出力するためのタグ付与機能、および音声出力機能である。テキスト変換機能の実現に際しては、書誌情報の提示という特異な発話行為の分析を行ない、発話ができるかぎり自然な日本語になるように留意した。テキスト変換機能とタグ付与機能はオリジナルなC言語プログラムの作成による実現を試みたが、音声出力機能は既製のソフトウェアを採用した。プログラムは簡単な実験を繰り返して改良を重ねたが、現在までのところ、タグ付与機能は十分な性能を実現できていない。
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