本研究では、コンピュータ・グラフィックス(CG)による爬虫類皮革の材質感表現のための基礎的な手法を検討することを目的とした。近年、CGによる自然物の表現手法の研究は盛んであるが、爬虫類などの生物の皮革の材質感表現に関する研究はほとんど行われていない。爬虫類皮革はハンドバックやベルトなどの工業製品として身近に利用されており、これらをCGにより表現可能とすることは、製品デザインにおいて画期的な技術となり得る。本研究では、皮革の平面特徴である鱗模様をボロノイ分割により表現し、更にベジエ曲線によりその立体形状を与えることにより、CGによる爬虫類皮革の材質感表現の基礎的手法の確立を目指した。具体的な研究実績を以下にまとめる。 (1)平面特徴 爬虫類皮革の鱗模様をボロノイ分割による幾何学的手法を用いて表現した。この際、ボロノイ分割のシ-ドを正方格子、三角格子など様々な方法で配置し、更に自然な揺らぎをフラクタル手法により表現した。 (2)断面形状 上記(1)により決定した鱗の平面形状に3次ベジエ曲線により、鱗の断面形状を与えた。3次ベジエ曲線はその制御点により形状が変化するため、コンピュータ画面上で最適な立体形状になるように、対話的に決定した。このため、対話型編集機構を構築した。 (3)製品デザインへの適用可能性 確立したCGモデルをハンドバックやベルトなどの皮革製品にテクスチャ・マッピングすることで本手法の製品デザインへの適用可能性を評価した。 CGによる質感表現法の確立は、生物の分野ではまだその緒についたばかりであり、本研究はCGによる皮革表現の基礎となるものと期待される。今後は、しわを含むダイナミックな皮革の質感表現を目指していく予定である。
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