コンピュータの発達と連係して、社会経済データベースの構築と利用が一般化しているなかで、データベース中に蓄積されている数値情報の効率的な処理システムの研究は、社会的要請を担う重要な課題である。本課題研究で、不確実な初期モデル設定から逐次的に完全数学モデルを構築するシステム、対像データに不完全性(欠測値、級併合、打ち切り、外れ値データなど)を許した下での有効数字モデルの構築システム、データに内在する潜在情報に関するモデル構築システムなど探索的な情報モデル構築システムの研究開発を行った。 本システムは、現実的な社会経済データベースへの適用を最終目的とするため、とくに、今年度は具体的な経済データの諸特性を吟味し、そこでの数値モデルの構築システムの理論展開とそのソフトウェアシステムを設計・制作した。その後、そのシステムを使用したシミュレーション実験を行い、本モデルの妥当性と有用性を数値評価した。その成果は、第61回日本統計学会において、「Tobitモデルに対するロバスト分析」の演題で報告された。これは、経済学でよく知られた従来のTobitモデルを任意打ち切りデータ、切り捨てデータ、外れ値の混在したデータに適用できるように拡張したモデルの、新規提唱とアルゴリズムの開発、その数値評価を行ったもので、本モデルの実用化を促進する成果である。 次に、多次元データの潜在的構造モデルとして代表的な、共分散構造モデルに対して同様にデータの外れ値許容アルゴリズムの理論開発とソフトウェアシステムの開発を行った。この成果は、第1回計算機統計学に関するアジア国際会議で論文発表され、論文誌:Proc.1st Asian Congress on Computatinal Statistics に "The Efficiency of estimation methods for covariance structure models under multivariate t distribution assumptions"に掲載された。 また、データの潜在構造モデルを探索する数学モデルとして、「局所独立の仮定を外した潜在クラス分析」を第61回日本統計学会で発表した。 上記の研究の遂行は、コンピュータ援用の下に行われたため、その関連経費が消化された。
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