本研究では、インスタンスベースのオブジェクト指向データベースモデルを提案し、それに対する操作体系の理論的基盤を与えるオブジェクト代数の定式化を行なうとともに、操作言語の設計、実装を行なった。 1.従来のオブジェクト指向データベースモデルの欠点を克服するために、スキーマとインスタンスの区別をしない、各オブジェクトが組と集合の両方の構造を持つ、集合とその要素の間の関連にも属性を付加できる、などの特徴を持つオブジェクトデータモデルを構築した。 2.構造検索機能と継承演算子を持つオブジェクトベース代数を体系化した。これは、上記データモデルのための質問代数である。各演算は操作言語の基本語彙構造を構成するための基盤を与える。オブジェクト代数は、組、集合構造の航行演算子やオブジェクト間の継承を明示的に指定するためのいくつかの継承演算子を持ち、それらの正規表現も許す。また表現能力の点では関係代数を包摂する。 3.上記のオブジェクトデータモデルのための操作言語を設計、実装した。オブジェクトの構造的な特徴である組、集合の両構成子に対応する航行演算子を導入している。また、データモデルの特徴である柔軟な継承指定に基づくオブジェクトの多様なビューの提供を実現するために、組、集合両構造に沿った継承演算子を持っている。さらに、これらの航行および継承演算の正規表現を導入することにより再帰質問を含む強力な演算の簡潔な表現を可能としている。
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