研究概要 |
本研究では,簡便で精度の高い瞳孔径計測システムを構築し,瞳孔径の変化に基づく神経疲労の評価法を開発した。得られた結果の概要は以下のとおりである。 1.ビデオ計測装置(VAN-55,KEYENCE製),ビデオ・フロッピ-,CCDカメラを用いて瞳孔径計測システムを開発し,マウス操作で瞳孔径,瞳孔面積を高い精度で計測できるシステムを開発した。 2.数人の被験者の起床から就寝までの瞳孔径を30分おきに測定し,周期解析の手法を用いて瞳孔径のサーカディアン・リズムを調査した。その結果,瞳孔径の概日変化には約10-12時間のリズムが存在し,瞳孔径は明け方の4-6時にかけて最小になることが示された。 3.2の結果より得られた瞳孔径の変化しにくい時間帯で,照明条件および作業に対する慣れなどの要因にも配慮して,精神作業(単純加算,内田-クレペリン検査)を負荷し,作業経過に伴う瞳孔径の変化を一定の時間間隔で計測した。被験者は,10名程度を用いた。統計解析などの手法を用いて考察・検討を加えた結果,被験者の精神疲労の蓄積とともに瞳孔径が減少する傾向が認められた。これより,瞳孔径の変化に基づく疲労評価の可能性が示唆される。 4.さらに,心電図,脳波などの生体情報も考慮して瞳孔径の変化に基づく精神疲労の評価の可能性について総合的に考察・検討した結果,瞳孔径の変化は自律神経系の機能の変化を反映しているのではないかということが示唆され,今後の研究への指針が得られた。
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