研究概要 |
既存断層をもつ花崗岩試料を2軸圧縮して発生させた不安定すべりについて,半導体歪ゲージにより断層近傍のせん断歪変化を,広帯域AEセンサー(200kHz-1MHz)により不安定すべりに先行して発生する弾性波を実験的に調べた.主な実験結果は以下のとおり.1.不安定すべり発生前に,微小破壊によると考えられる高周波弾性波が観測される.微小破壊の震源は断層面上に決まり,多くの場合破壊核形成域にある. 2.せん断歪記録から推定される破壊核形成過程が始まる前にも,微小破壊が発生することがある.このときも震源は後に破壊核形成域になる領域にある15EA03:3.不安定すべり発生時に断層至近距離で観測される強振動に比べ,上記の微小破壊の周波数成分は低い.これらのことから,すべり面上の微視的過程について次のように推測される.巨視的なすべりに先行して,または安定すべりに伴って,すべり面上のアスペリティが脆性破壊をおこす.脆性破壊がおこるとその周囲に応力集中をもたらし次々とアスペリティが脆性破壊をおこしていく.この過程によって最終的に巨視的な不安定すべりが発生する.巨視的には安定な現象であっても,微視的には不安定な現象を含んでいることは興味深い.San Andreas断層のクリープ領域でも微小地震は発生していること,顕著な前震活動が大地震に先行することがあること,等を考えると,今回の実験結果は地震学的に非常に重要である.今後は,微小破壊の震源パラメターの決定を行う等,より詳細な解析を行っていく予定である.
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