研究概要 |
本研究の目的は東北日本弧南部に分布する第四紀火山の爆発的噴火の歴史を明らかにし,将来の噴火の様式・規模・時期を推定することにある.対象とした火山は,北から順に,安達太良,吾妻,磐梯,沼沢,那須,高原,男体,日光白根,燧ケ岳,飯士,赤城,榛名,草津白根,浅間の各火山である. このうち磐梯火山と沼沢火山の噴火堆積物については,10万年前から5万年前にかけて降下堆積した広域テフラとの層位関係を明らかにした.また,20万年前から30万年前にかけて降下堆積したと考えられているテフラとの関係も把握した.那須,高原,男体についてはすでに確立されている噴火史の年代精度を高めることができた.これは1万年前から2万年前にかけて降下堆積した浅間火山起源のテラフを,それぞれの火山山麓部で発見することができたためである.日光白根,燧ケ岳,飯士,赤城,榛名,草津白根,浅間についての火山灰層序は,今回の調査研究では大きな変更を加える必要がなかった. 以上のデータをもとに各火山において,単位時間当たりのマグマの噴出量,噴火頻度,噴火様式が時代とともにどのように変化してきたかを考察した.将来の活動予測を行なうには噴火史から見て現時点における各火山の状況を把握する必要がある.それは以下のとおりである.男体,浅間は,この数万年間,テラフをもたらす噴火を繰り返す時期にある.安達太良,磐梯,高原,赤城,榛名にはかって盛んに噴火を繰り返す時期があったが,少なくともこの数万年間はそうした時期からはずれており,相対的に静穏な時期にある.
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