永久磁石の表面磁場を有効に用いると、電磁石の場合に比べてコンパクトなプラズマ源の実現が期待できることから、永久磁石を用いた小型ECRプラズマ源の開発と、実際にそれを用いたダイヤモンド薄膜の作製を目的として研究を行った。 表面磁場を利用する上で重要な要素は、磁石の配置、すなわち表面磁場の分布と、マイクロ波の供給方法である。磁場分布については、高エネルギー電子が効率よく閉じ込められるマルチリングカスプ型を用いた。この磁場分布では、磁石に沿って電子のドリフト運動が生じ、これにより円周方向のプラズマ密度の分布を均一化できることがわかっている。 電子サイクロトロン共鳴(ECR)領域へ効率良くマイクロ波を供給る方法として、本年度は、多重同軸円筒型のアンテナを設計・製作し、実際にプラズマの発生と計測を行った。同軸円筒型アンテナは同軸スリット部分でのプラズマ発生を抑制し、強磁場領域側からのマイクロ波入射を実現できる。実際の結果、通常のECR放電を行う圧力範囲では、カットオフすることなくマイクロ波を入射できることが確認された。また、プローブ測定により得られたプラズマパラメーターは、中心付近の直径約100mmにわたって均一となるが、磁力線の空間分布の影響を大きく受けることがわかった。すなわち、アンテナ近傍を通過する磁力線に沿って、ECR領域で生成された高エネルギー電子が多く存在するため、電子温度の上昇と浮動電位の低下が顕著である。均一なプラズマを得るためには、この磁力線分布の最適化が重要となる。今後、この磁力線の設計をすすめるとともに、これまでに得られたプラズマに材料ガスを導入して、ダイヤモンド薄膜の作製を行う予定である。
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