1.まず、設備備品費で購入したターボモレキュラーポンプと現有設備を用いてECRスパッタ装置を製作した。装置はステンレス製円筒型真空容器(長さ70cm、直径16cm)、真空排気(ターボモレキュラーポンプ)及びガス導入装置、マイクロ波発振器で構成されている。真空容器中央部には、2枚の円盤状(直径6cm、厚さ1cm)の永久磁石(Sm-Co)がN極面とS極面が向かい合う様に配置されており、両磁石間でミラー磁場配位が形成される。このミラー磁場の磁力線に垂直な方向から導波管によりマイクロ波を入射し、ECRプラズマの生成と閉じ込めを行った。磁石間隔を変えることにより共鳴点の空間分布やミラー磁場の形を変化させることができる。両磁石の向かい合った面には円盤状のターゲット(直径6cm、厚さ0.1cm)を設置し、直流電圧を印加することによりスパッタを行うことができる。 2.上記装置を用いてECRプラズマを生成し、ガス圧力、マイクロ波入射電力、磁石間隔とプラズマの空間分布の関係調べた。その結果、マイクロ波入射電力が低い時はプラズマはミラー磁場に閉じ込められ磁石付近に分布するが、入射電力を上げて行くとある電力値で突然マイクロ波入射口側へ偏った分布へと変化することが分かった。この変化の起きる電力値はガス圧が高いほど、また、磁石間隔が広いほど低くなることが分かった。 3.プラズマが磁石付近に分布する状態でターゲットに電圧を印加し、成膜速度の目安となるターゲット電流密度を測定した。その結果、磁石間隔が狭い時(6cm)、ターゲット電流は高くなり、約0.2A/cm^2(-100V印加時)になることが分かった。また、ガス圧力を低くしても(0.3mTorr)ターゲット電流は減少しないことが分かった。従って、本装置ではECRプラズマの特徴を活かした低ガス圧力下での高速スパッタが可能であると考えられる。
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