使用済核燃料の再処理時に発生する高レベル放射性廃棄物には未回収の超ウラン元素が含まれるため地質学的年代にわたり生物圏から隔離する必要がある。この方法としてガラスに固化した廃棄物を深地層処分する方法が最も有望である。これは、生物圏からの距離をとるとともに、深部地下での化学環境(低い酸化還元電位)における核種の低い溶解度、岩石への核種の吸着による核種移行の遅延を期待したものである。 本研究では、電気的に地下深部と同じ還元環境を作り、花崗岩構成鉱物へのウランの吸着挙動を調べることを目的とした。 ウランを還元状態にするための方法としてフローク-ロメトリーを用いた。この方法は、炭素繊維を詰めたカラム(電解還元カラム)にウランを含む溶液を透過させ、その炭素繊維と白金電極(別途溶液と接触)間に電位差をかけることによって、透過するウランを連続的に還元する方法である。本研究のために作製した電解還元カラムを用いて、硝酸ウラン溶液(濃度薬0.08mMおよび0.04mM)の電解還元実験を行った。ウランの電解還元反応は下式の様になる。 UO_2^<2+>+2e^-+4H^+=U^<4+>+2H_2O pH1での実験では理論電位-50mVから反応が起こり始め、約-300mVでほぼ100%完了した。流速一定の条件ではウラン濃度に比例した還元電流が得られた。しかし、溶液のpHが上がると還元反応は不安定となり、pH5では安定した還元電流の意地が困難であった。これは、精製した4価のウランが炭素繊維に吸着あるいは水酸化物として沈殿を生じるためと推定された。 溶液のpHが3以下ではウランはほとんど収着しないため、収着実験はpH4以上で行うことが必要である。今回の還元実験においては高pHで安定した還元が行えなかったため還元環境での吸着実験データを得ることはできなかった。また、pHの上昇とともにウランの溶解度も低下するため、本実験で用いたウランの定量方法(フルオリメーター)の測定限界(約1nM)では正確な測定は困難であった。
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