研究概要 |
1.序 大型核融合実験装置で使用されている炭素系材料は,耐熱性,耐熱衝撃性に優れる反面,水素の吸蔵量が大きく,現状ではヘリウム放電等で水素量を下げてリサイクリングを制御している.しかし,今後の長時間放電に向けて,この水素リサイクリング過程についての知見を得ることが重要となっている.本研究では,まず高温における炭素材料中の水素リテンションを知ることを目的として,水素溶解測定を行い,水素溶解の機構とリテンション低減への提案を行なった. 2.方法 微量水素溶解度測定装置を用いて,20銘柄の試料について,水素溶解度,溶解速度の測定を行なった.この溶解に及ぼす試料の特性については,粉末X線回析を中心に測定を行い,溶解挙動に及ぼす中性子照射効果をJMTR照射試料について試験した. 3.結果 水素溶解度は,使用した炭素材料銘柄毎で著しく異なり,最大16倍の違いが見られた.この違いは,試料の格子定数C_Oより求まる黒鉛化度によって説明することができ,高黒鉛化度の試料ほど水素溶解度が低くなることが分かった.また,中性子照射によっても水素溶解度が最大50倍に増加することから,水素は格子欠陥に捕捉されているものと考えられ,捕捉サイト濃度の評価を試みた.さらに,炭素-水素の強い結合が存在する系での脱捕獲,再捕獲,拡散,再結合を素過程とした動的な移動機構をモデル化して,実験結果との比較を行なった.今年度の成果については,これまでの実績と合わせて,第6回核融合炉材料国際会議(平成5年9月,イタリア),第2回核融合炉燃料-材料相互作用に関する日露ワークショップ(平成5年10月,ロシア)において発表を行なった.
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