研究概要 |
トリチウムbeta線の生物学的影響、特にトリチウム水による内部被曝時の影響評価と障害を軽減する方策について検討した。マウスにトリチウム水を1回腹腔内投与した後、利尿剤と過剰水投与により急性影響に関しては自由水トリチウムの排泄促進と造血細胞の障害低減等を以前に報告した。今回は同様の処理により、長期飼育環境下において晩発影響の軽減に有効であるかを突然変異誘発能を指標として検討した。B6C3F1マウスに148MBgのトリチウム水を投与後、無処理コントロール群と、2,24,48,72,96時間後に8mg/kg/3mlのフロセマイドをさらに20,44,68時間後に5%ブドウ糖液2mlを腹腔内投与した利尿処置群を作製した。約2ヶ月にわたって新鮮尿を採取しトリチウム濃度を測定した結果、利尿処置群で有意なトリチウムの尿への排泄促進が認められた。2ヶ月後に屠殺解剖し、脾臓を無菌的に取り出し単細胞浮遊液を作製した後、脾細胞のConAマイトジェンに対する反応性を比較した結果、両群において有意な差は認められなかった。トリチウム水投与2〜3日後に同様に比較した以前の結果では利尿処置群でマイトジェンに対する反応性でみた障害の軽減を認めたことと比較してこの結果は、2ヶ月経つと急性の障害は両群とも同様に回復していることを示唆している。一方これら脾細胞をT細胞増殖因子を加えた培養液でマイクロプレートで培養することで6-チオグアニン抵抗性突然変異誘発性を比較した結果、利尿処置群で無処置群の7.5%程度まで誘発突然変異頻度が抑制される結果が得られた。以上より以前の結果とあわせ、利尿処置は急性影響だけでなく、晩発影響に関しても影響低減効果を認める可能性が示唆された。
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