研究概要 |
福島県赤井谷地,宮床湿原,駒止湿原を主体に岩手県内のいくつかの湿原において,植生調査と泥炭堆積物の採取,実験室での泥炭中の残留植物遺体の分析を行った結果,次のような研究成果が得られた。 1.湿原植生に関して (1)空中写真の判読と現地踏査による湿原内の微地形(小隆起地,小凹地など)の存在を確認し,大縮尺の詳細な地形図を作成した。(2)微地形を基準に植生調査を行い,群落分類を行った。その際,微地形を判断する基準にミズゴケ類が有用で,識別種となり得ることが明らかとなった。(3)ミズゴケ類単一種ではなく,複数種の組み合わせによって湿原区分・類型化が可能であることを把握した。(4)湿原の発達に係わる地形的要因に基づく湿原区分と現存植生から類型化された湿原区分との間で比較検討を行った。 泥炭堆積物解析に関して (1)赤井谷地と宮床湿原において非破壊土壌採集ボーラー(市販品の改良型)を用いて泥炭堆積物を採取し,実験室において残留植物遺体の分析を行った。(2)泥炭堆積物は光学顕微鏡下で属レベル(高等植物),種レベル(ミズゴケ類)の分類・同定がある程度可能で、その結果を用いて植物群落の変遷を解析した。(3)赤井谷地において泥炭堆積物中の残留植物遺体の構成から,火山灰の堆積によって植生が大きく変化したことが明らかとなり,その当時,湿原環境に大きな変動が生じたことが解明された。(4)泥炭堆積物採取の際,泥炭の収縮,不連続化などの分析に関わる大きな問題が生じることが判明し,ボーラーの改良を含めた技術的問題を今後解決される必要を認識した。
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