本研究は、土地被覆をグローバルに把握するために従来利用されてきた可視・近赤外センサの限界を克服するために、マイクロウェーブセンサ(SSM/I)のデータを利用法を検討し、分類手法を開発することが主目的であったが、検討の結果、以下の理由によって現段階でのパッシブ・マイクロウェーブセンサによる土地被覆分類には十分な信頼性が得られないという結論に達した。 パッシブなマイクロウェーブセンサでは微弱な放射エネルギーを捉えて十分なS/Nを確保するためには地上分解能を犠牲にせざるをえず、SSM/Iの50Kmというフットプリントでは解像度が不十分である。半径50Kmがすべて単純な土地被覆であるという地域はそれほど多くはない。従来の可視・近赤外センサのデータで、分類結果をある程度信頼できる地域の比較で、SSM/Iによる分類結果は著しく信頼性に欠けるという結果になった。この主な原因は地上解像度が低すぎることによる。また、もう一つの原因はマイクロウェーブの放射がもつ地表情報それ自体にある。可視・近赤外のデータでは植物のクロロフィルによる入射エネルギーの吸収を指標として用いるが、マイクロウェーブの場合、得られたデータの有する地表面の情報は、地表面の散乱体としての特性に限られるため、土地被覆と結び付けることが困難で、可視・近赤外以上に対象地域の土地被覆の事前知識を要するためである。マイクロウェーブセンサのデータの利用は、可視・近赤外データによる土地被覆把握の高精度化を達成した上で(限界はあるが)、その知識を利用したモニタリング手法への適用を考えるべきである。それも現状より地上分解能が向上しなければ困難であるといえる。
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