日本海沿岸低地において、完新世海面変化に伴う堆積環境変遷と対馬暖流の影響を評価する目的で、北海道道北地方および対馬。壱岐地方の調査を行った。 北海道道北地方については、これまでに採取したコア堆積物の再検討を実施するとともに、新たに苫前町においてコア堆積物の採取を行った。礼文島久種湖沿岸で1988年に採取した試料について、さらに詳細な分析を試みたところ、新しく以下の知見が得られた。 1.久種湖は約6000年前の完新世海進頂期に砂洲の発達により、淡水化が始まった。 2.久種湖はその形成初期の段階においては、上層に淡水、下層には海水が流入まやは停滞する二重構造を呈していた。 3.久種湖は完全に淡水湖となる前の汽水環境下において、特徴ある珪藻種が優占的に出現した。 今年度に採取した苫前のコア堆積物については、現在、珪藻およびイオウの分析を進めている。珪藻分析では、道北地方の内陸部に分布する新第三系の珪藻土の再堆積が問題となることが明らかとなり、イオウ分析からは堆積が海水の影響が少ない環境条件下で進行したことを示唆するデータがこれまでに得られている。 対馬・壱岐地方については、壱岐の海岸部においてボーリング調査を行い、深度約18mで基盤に達するコア堆積物を得た。また、対馬では、完新世海進頂期の海成堆積物を採取するのに適した場所を選定する予備調査を実施した。
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