本研究の目的に沿って研究を進めた。はじめに、4月から6月にかけて水田除草剤CNP(クロルニトロフェン)を対象として、福井県内および滋賀県琵琶湖を対象として水生昆虫による生物モニタリング調査を行った。その結果、県内および琵琶湖流入河川でCNPによる汚染が判明した。その汚染レベルを河川水濃度に換算するために、生物濃縮係数を実験的に求めた。その際の取り込み機構を表現するために数学的モデルを構築し、呼吸による取り込みに関するパラメータを実験的に求めた。生物濃縮係数を用いて、確率的に水質値を算定する手法を開発した。しかし、本研究で対象としたCNPが使用禁止となったことでその評価法についての再検討が必要となった。本年度の研究の主たる成果は次の6点である。 1.凍結乾燥器を用いて、水生昆虫の乾燥試料を作成し、容易に指標農薬を定量することができた。 2.その結果、水生昆虫を用いてCNP(平成6年度から使用禁止)を生物モニタリングすることができた。 3.水質値への換算法を提案し、確率的表示で基準値と比較を行った。 4.生物濃縮機構に関する数学モデルを構築し、そのパラメータ値を実験的に求める方法について検討した。 5.平成6年度においても、本年度の成果を利用し、平成6年度から使用禁止となったCNPを生物モニタリングすることにより、CNPが速やかに他の安全な除草剤に転換されたかをモニタリングできる。 6.今後、他の農薬についても生物濃縮性および代謝・排泄の両面から検討を加えていく必要がある。
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