(1)実験水路における生物の行動の測定 実験魚としてトラフグ当歳魚を用い、相異なる環境を持つ水路間を魚が自由に往来できるようにした実験水路を用いて、流速、隠蔽、群、水温、DO、底質、塩分濃度、濁度、餌料、硫化水素の各環境条件およびそれらの複合条件に対するトラフグの左右水路間の分布を求めた。また、塩分濃度、濁度、硫化水素、DOについてトラフグの死亡速度を求めた。 (2)生態系モデルによる生物の行動の定量化 (1)で用いた実験水路をSSEM(a Shallow Sea Ecological Model:申請者らが開発した魚の行動を考慮した漁獲量変動予測モデル)によりモデル化し、単一環境条件に対する実験結果から各環境条件に対する選好強度式を求めた。また、複合環境条件に対する実験結果から各環境条件に対する選好強度間のウェイトを求めた。さらに、死亡速度実験から特殊な環境条件下における生理パラメータを求めた。平成4年度の淡水魚(タナゴ)では隠蔽に対する選好強度が極めて大きかったが、海水魚であるトラフグでは底質、DOに対する選好強度が大きいことが判明した。 (3)生態系モデルの周防灘への適用 周防灘を37ボックスに分割し、交換水量、水深、流入負荷量を入力データとしてSSEMにより周防灘モデルを作成した。これに(2)で求めた選好強度式を持つ魚を植物プランクトン、動物プランクトン等とともに組み込んだ。モデルの規模が大きいため、このモデルの検証は今後の課題である。
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