本研究では、凝集剤生産菌としてストレプトマイセスグリセウス菌を使用し産生された凝集剤の生産条件及び基本的性質について検討した。 ストレプトマイセスグリセウス菌は、比較的単純な培地組成で培養することができるが、凝集剤生産条件と菌体培養条件には違いが現れた。本菌を、炭素源として酵母抽出物を使用して30℃、3〜4日間培養することにより比較的大量の凝集活性(懸濁物質:カオリン)が検出された。また、本凝集剤の凝集活性pH依存性について検討した結果、その凝集活性はpH4を最大として釣り鐘状のpH曲線を与え、本凝集剤が酸性領域で働くことが明らかとなった。次に、一般に使用されている凝集助剤のカチオン併用効果について検討した。その結果、2価のカチオンを併用するとその凝集活性は大きく増加したが、3価のカチオンを使用した場合にはその凝集活性は低下傾向にありむしろカオリン粒子を分散させる結果となった。また、本凝集剤の熱安定性について調べた結果、本凝集剤は比較的熱に対して不安定であり、沸騰水中5分の加熱でほとんど完全に失活した。更に、タンパク質を多く含んだモデル廃水として卵白を溶解した水溶液を用いて、ストレプトマイセスグリセウス菌が生産する凝集剤性能を有機高分子及び無機系凝集剤と比較検討した結果、無機系凝集剤が最も良好な結果を示した。しかし、本菌が生産する凝集剤も比較的良好な性能を有しており有機系高分子凝集剤よりは優れた結果が得られた。 今後は、本凝集剤を各種クロマトグラフィー等を利用して分離精製を行い、本凝集剤の化学構造等を明らかにし、高付加価値化も含めて本凝集剤のさらなる研究開発を行いたい。
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