シベリアやアラスカで繁殖するシギ、チドリ類は、日本を通過し東南アジアやオーストラリアなどの地域で越冬する。沖縄島などの南西諸島の亜熱帯地域のサンゴ礁や干潟は、日本を通過する多くのシギ、チドリ類の渡りの中継地になっている。シギ、チドリ類の個体数は世界的にみても減少しており、その保護のためにはシギ、チドリ類の生活環境の調査を行う必要がある。本研究ではシギ、チドリ類の生息環境を南西諸島の亜熱帯地域で調べ生息環境保全のための基礎調査を行った。南西諸島はシギ、チドリ類の極東地域の越冬の北限になっていると考えられている。しかし、亜熱帯地域での渡りの時期の出現種やその個体数などに関する報告はほとんどなかったため、本年度は沖縄島、石垣島と宮古島でシギ、チドリ類の越冬期を中心に生息状況を調査した。沖縄島では月1-2回漫湖、糸満などの干潟で、石垣島では1994年1月1日から7日まで、宮古島では3月5日から9日まで海岸線でシギ、チドリ類のセンサスを行った。センサスを行う時に砂質、泥質干潟、砂浜、岩礁、サンゴ礁などの環境に分け、それらの地域で採食しているか休息しているかを区別しカウントした。沖縄島ではシギ、チドリ類は泥質干潟である漫湖、糸満などの干潟で多かった。石垣島ではサンゴ礁の潮間帯に多かったが、宮古島の海岸線は岩礁と砂浜が多いため与那覇湾以外では個体数は少なかった。これらの地域ではムナグロが優先して越冬していた。いずれの地域でも本州では優先しているシロチドリ、ハマシギやミユビシギなどの個体数は少なかった。これらのことから、本州の泥質干潟で採食し越冬する種が少なく、砂質干潟やサンゴ礁で採食することができる種が多いことが判明した。
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