マゲイニンは蛙皮膚から分泌され、外傷からの感染を防ぐ自己防御の働きを持つペプチドである。また、赤血球に対するヘモリシスをおこさない、新しいタイプの自己防御ペプチドとして注目されている。申請者はマゲイニンが水溶液中及び生体モデル膜中でa-ヘリックスが2分子会合したcoiled-coil構造という超2次構造を取っていることを発見した。これは他の両親媒性抗菌ペプチドには見られない性質であり、マゲイニンの細胞識別との関係が示唆された。今回、マゲイニンの機能構造を解明する目的で、マゲイニン分子をジスルフィド結合で2量化したアナローグをデザイン合成した。 ペプチド合成は固相ペプチド合成法により行なった。合成のプロトコールについて検討した結果、用いる樹脂、反応試薬、反応時間を制御する事で、マゲイニンタイプのペプチドを80%という、高収率で得ることができた。従来の方法では10%であったことから、今後ますますの応用が期待される。 立体構造はCDスペクトルで解析された。天然のマゲイニンはリン酸暖緩衝液中で500muMの高濃度でcoiled-coil構造をとる。しかし、二重化されたアナログは10muMで同様の超二次構造を形成した。これは二重化によるcoiled-coil構造構築が、濃度にして約50倍易容化されたことを意味し、マゲイニンの二重体構造の1つの証明となった。また、この二重体アナログのcoiled-coil構造は添加塩効果でも誘導され、疎水性相互作用で構造誘導されていることが判明された。さらに、トリフルオロエタノールで一本鎖a-ヘリックスに変換され、環境により構造変換が可能な、動的平衡にあることが示唆された。 この2量化マゲイニンはcoiled-coil構造の安定化と、それに伴う機能の増強が期待され、マゲイニンの特異性の解明に有用なアナローグとなることがわかった。
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