研究概要 |
クララ植物体においてプレニルフラボノイドが根のコルク層に局在していたことから、コルクのプレニルフラボノイド生産に対する役割を明らかにするために、クララ液内振盪培養系にコルク片を添加したところ、生長にはほとんど影響せずに、通常の約3-5倍のプレニルフラボノイドが生産され、その70-80%がコルクに吸着された。培養細胞におけるプレニルフラボノイドの局在部位を明らかにするためにプロトプラストを調製し、そのプレニルフラボノイド含量を測定したところ、残存量は細胞の2-6%程度であったことから、プレニルフラボノイドは細胞壁に蓄積していることが明らかとなった。一方、プレニルフラボノイドの増加の原因としては、1)コルク添加による二次代謝系の活性化、2)のコルクへの吸着による分解からの保護が考えられた。しかしコルク片の構成成分であるcellulose,suberic acidを添加しても生産性の増加は認められず、また培養時にプレニルフラボノイドを投与してもほとんど分解されなかったことから、これらの可能性は否定された。従って、細胞壁に存在し何らかの形で生産系に抑制的に作用していたプレイニルフラボノイドがコルク片に移行した結果、抑制が解除されて生産性が増加したのではないかと考えられた。このことを明らかにするためにプレニルフラボノイド生産の鍵酵素であるプレニルトランスフェラーゼ活性の変動について検討した。基質としてdimethylallyl diphosphyateを合成し、Mg^<2+>およびnarigeninの存在下、クララ培養細胞から抽出した粗酵素溶液とインキュベートしたところ、naringeninより局性の低いフラバノン骨格を有する未知の化合物2つが検出された。現在これらの化合物の構造決定を試みている。
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