Peptide YYは消化管機能の調節因やインスリン分泌の抑制因子として働くペプチドルホルモンである。本研究の目的は、これまで不明であったヒトのPeptide YYの前駆体および遺伝子の構造を明らかにすることである。平成5年度の研究計画は、計画どおりに進行し、以下の様に期待された成果が得られた。 1.ヒト結腸から抽出したRNAよりcDNAライブラリーを作製し、合成DNAをプローブとしてヒトPeptide YY前駆体cDNAを単離した。 ヒトPeptide YY前駆体cDNAの全塩基配列をdideoxy法により決定した。これにより、ヒトPeptide YY前駆体の構造がはじめて明らかとなった。 3.ヒトPeptide YY前駆体cDNAをプローブに、ヒトの種々の組織から抽出したRNAに対してnorthem blot analysisを行った結果、結腸ではPeptide YY遺伝子の発現が認められたが、これまで免疫染色等によりPeptide YYの存在部位とされてきた膵臓、胃粘膜では明らかな発現は認められなかった。 ヒトのgenomic DNAライブラリーを作製し、ヒトPeptide YY前駆体cDNAをプローブにPeptide YY遺伝子を単離した。 ヒトPeptide YY遺伝子の全塩基配列をdideoxy法により決定し、Neuropeptide Y、Pancreatic Polypeptideの遺伝子の構造と比較した。その結果、これら3つのペプチドルホルモンの遺伝子エキソン・イントロンの構成がよく保存されており、共通の祖先型遺伝子の重複によって生じたものと考えられた。
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