研究概要 |
カルパインはCa^<2+>依存性細胞内システインプロテアーゼであり、直接細胞内タンパク質と相互作用する細胞内モジュレーターと考えられる。従来から研究されているmu-,m-カルパインは普遍的に発現し、細胞の基本的かつ重要な機能を担うと予想されるのに対し、我々は骨格筋特異的に発現する第3の分子種を見いだした。組織特異的カルパインは、組織の機能と関連した解析、構造比較が可能なため非常に有用である。そこで我々は、さらに組織特異的カルパインを探索し、胃特異的に発現する分子種を発見した。本研究ではまずこの構造を完全に決定し、全長をコードするmRNAに加え、alternative splicingによってC-末端のCa^<2+>結合領域を欠損する構造も存在することを明らかにした。すなわち、一つはアミノ酸703残基から成り全長にわたってmu-,m-カルパイン大サブユニットに相同性を持っていたのに対して、一方は381残基から成り、ほぼプロテアーゼドメインのみを含んでおり、それぞれnCL-2,nCL-2'と名付けた。Ca^<2+>結合領域の欠損は、カルパインが元来Ca^<2+>を要求しないプロテアーゼであることを示唆するため、活性制御機構や分子進化を解析する上でも非常に興味深い。そこで、これらの転写調節機構を解析するためにnCL-2,-2'の遺伝子を解析した結果、両者が同一の遺伝子座に存在することが確認され、遺伝子も1コピーであることが明らかとなった。現在、上流領域の解析などを進めているところである。また、nCL-2,nCL-2'をCOS細胞に発現し、これらの発現様式を解析したところ、特にnCL-2は、浮き上がってきた細胞に多く発現していることが明らかとなった。このことが細胞のアポトーシスなどと関係している可能性もあり、現在さらなる解析を進めているところである。
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