研究概要 |
pP344は、ニワトリ網膜色素上皮細胞に特異的に発現している遺伝子として見いされたもので、分子転換の調節因子である可能性が示唆されている。そのcDNA配列から、pP344は、エラスターゼインヒビターであるエラフィン様ドメイン、免疫グロブリンン様ドメイン、2個のKunitzインヒビター様ドンメインなどを持つ分子量約70kDaの多機能性プロテアーゼインヒビター(PP344) をコードしていた。今回、われわれは、PP344の生理機能を明らかにする目的で、PP344を網膜上皮細胞培養土清から精製し、種々のプロテアーゼに対する阻害スペクトラムの解析を行った。 PP344は、網膜色素上皮細胞の培養液中から、Kunitzドメインの合成ペプチドに対する抗体と反応する70kDaタンパクとして、Q-Sepharoseに続き、不溶化anhydrotrypsinカラムを用いて精製した。精製PP344のアミノ酸組成及びN末端配列分析の結果、成熟PP344は、31残基のシグナル配列後のLeu-32よりHis-570までの539残基よりなり、糖を含まない分子量は60,359と計算された。また、マミノ酸分析よりPP344の吸光係数は12.8と求められた。各種プロテアーゼに対する阻害活性をスクリーニングした結果、PP344はトリプシンを強く阻害するものの他のプロテアーゼ(キモトリプシン、エラスターゼ、組織性プラスミノーゲンアクチベタ-、ウロキナーゼ、プラスミン、血漿カリクレイン、顎下腺カリクレイン、トロンビン、凝固Xa因子、プロテインCなど)は、阻害せず、生理的にターゲットとするプロテアーゼの同定にはいたらなかった。また、トリプシンん対するPP344の阻害定数(Ki値)は5.6x10^<-8>Mであった。以上の結果、PP344のエラフィン様ドメイン及びKnitz-1に阻害活性はなく、Knitz-2の反応部位であるLys^<-392>-Ala^<-392>が重要であることが示唆された。また、PP344はプロテアーゼに対する阻害特性が強いと考えられる。
|