研究概要 |
Guillain-Barre症候群(GBS)は、先行する呼吸器等の感染時に生じた様々な抗体が、抹消神経ミエリン上の抗原と交差する結果引き起こされる脱髄性末梢神経障害と考えられる、特に糖鎖抗原に対する自己抗体が病態に深く関与する事が近年明かとなってきている。GBSの先行感染と同定されるウイルスには、神経系との共通糖鎖抗原が存在すると推測されるが、神経系との共通抗原の存在は推測のみで明らかではなかった。我々はこの点に着目してGBSに関連した先行感染の一つであるサイトメガロウイルス(CMV)の感染により神経系の糖鎖に対する抗体が産生されるか以下のように検索した。 まず、ヒト末梢神経ミエリンの糖脂質の構造解析を行い、運動、感覚神経ミエリンにはGalCerに加えて糖鎖の長いネオラクト系中性糖脂質がenrichしている事、HNK-1抗原として知られるグロクロン酸を含む硫酸化糖脂質、SGGL(sulfated glucuronyl glycosphingolipids)が運動、感覚の両神経に存在することを見いだし報告した。これらの抗原を用いてヒトCMV感染症患者の血清中の抗糖鎖抗体をELISA法、TLC-免疫染色法により検索したところ、末梢神経ミエリンに特徴的な硫酸化糖脂質に対する高力価の抗体が検出される事が分かった。この抗体の反応性を調べると、各種の硫酸化糖脂質(SO_3-LacCer,seminolipid(SM4g),SGGL)に対して結合するが、コレステロール硫酸とは結合しなかった。この事実により、この抗体の結合には硫酸基+糖鎖の構造が必要である事がわかった。 又、硫酸化糖鎖に対する抗体が産生される機構としては(1)ウイルス粒子に同様な糖鎖が存在することが予想されるためアフィニティークロマトグラフィーによる実験を行った。スルファチドカラム及びヘパリンカラムにより抗硫酸化糖鎖に対する抗体を除いても、抗CMV-IgG抗体は変化しなかったことより、ウイルス粒子に対する抗体と硫酸化糖鎖に対する抗体は異なる可能性が示された。
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