研究概要 |
1.本研究は、基底膜の細胞接着タンパク質であるラミニンと硫酸化糖脂質との溶液中での相互作用を、NMR法を用いて立体化学的に検討することを目的としている。これに先立ち、硫酸化糖脂質の立体構造に関する情報を得る目的で、硫酸基の分子内水素結合への関与を検討した。 高塩濃度環境下で生育する高度好塩菌172株の主要な極性脂質として存在する硫酸化糖脂質(S_2DGA)は、一つの糖残基中に2つの硫酸エステルを含む、非常に高度に硫酸化された新しい構造(HSO_3)_2-2,6Manalpha-2Glcalpha-1Archaeolをもつことを、^1H-および^<13>C-NMR法を用いて明らかにした。このようなビス硫酸化糖脂質は、硫酸基のおよぼす影響を検討するうえで重要なモデル化合物であると考えられる。 S_2-DGAの水酸基の^1H-chemical shiftの解析から、mannnose(Man)の3位の水酸基が水素結合に関与していることが明らかになった。^1H間の距離情報を与えてくれるNOEスペクトルを測定することによりS_2-DGAの立体構造を検討した結果、水素結合の相手は、Manの2位に結合した硫酸基であると考えられた。また、Manの6位のみが硫酸化されたモノ硫酸化糖脂質(S-DGA)のNOEスペクトルをS_2-DGAと比較検討した結果、2位が硫酸化することにより、Manのグリコシド結合部の立体構造が変化することが示唆された。2位の硫酸基は、立体構造に少なからず影響を与え、分子内水素結合を形成することによりその構造を安定化に寄与していると考えられる。さらに、分子間相互作用においても、その安定化に影響を与えていることが期待される。
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