研究概要 |
今年度は、ホスホリパーゼCgammaのSH3ドメインの立体構造をNMRを用いて決定し報告した.また,Protein Data Bankに1HSPのエントリ-ネ-ムで登録した.ホスホリパーゼCgammaのSH3は7本のbetaストランドからなり,N端側からbetaA-betaGと呼ぶことにする.ただし,4番目のストランドは途中でベンドしているのでbetaDとbetaD'に分ける.SH3の立体構造は,基本的に3つのbetaシートからなるが,これら3つのbetaシートをbetaI,betaII,betaIIIと呼ぶと,betaI(betaA+betaD+betaG)は3本鎖の反平行betaシートであり,N末端とC末端が存在する.このようにN末端とC末端が近接していることはSH3がドメインとして存在するのに好都合であると考えられる.betaII(betaB+betaC)は2本鎖の反平行betaシートであり,先端にループ(BCループ)が存在する.betaIII(betaD'+betaE+betaF)は3本鎖の反平行betaシートである.betaIとbetaIIIはほぼ直角に組合わさって,いわゆる"betaシートサンドイッチ構造"をとっている.これにbetaIIがおおいかぶさって,全体的にコンパクトな構造が形づくられている.betaFとbetaGの間は一巻き分の3_<10>ヘリックスが存在する.論文発表後,さらに構造計算の精密化をすすめ,ほぼ最終構造を得た.近い内に2HSPとしてProtein Data Bankに送る予定である. GRB2タンパク質のC端側のSH3ドメインの精製法を確率した.また.^<15>NラベルのSH3ドメインも調整した.このタンパク質はpH8以上でのみ安定で,溶解度も高い.しかしながら,NMR測定はpH7以下である必要があり,溶解度を保ったままpHを下げる条件を検索し,10%のDMSOを加えることにした.ただし,この条件下でもSH3ドメインは数日の半減期でランダム状態に変性してしまう.現在,構造決定に必要なNMRデータを収集中である.
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