欠損型受容体のmRNAを初期胚へ注入すると、形態観察から腹側中胚葉が主に形成される。完全型受容体では、腹側ばかりでなく背側の中胚葉も形成されることがわかった。この反応性の違いを分子レベルで明らかにするには、マーカーが必要である。しかしながら現在、背側組織のマーカーとしてホメオボックスや接着因子などの遺伝子が利用可能であるが、腹側組織には適当なマーカーがない。そこで腹側中胚葉の代表的組織である心臓や血液・血管系で特異的に発現している構造遺伝子に着目しそのクローニングをおこなった。 アンギオテンシンIIは、血管平滑筋の収縮やアルドステロンの合成分泌促進など血圧や体液量の調節の関わるアミノ酸8個からなる生理活性ペプチドである。このアルギオテンシンの受容体(AIIR)は、Dup753とPD123319の2種類のアンタゴニストによる反応性の違いにより分類されている。薬理学的な実験によりこの2つのアンタゴニストの応答しない新奇受容体が、両生類の心臓に存在することが報告されていた。そにでツメガエル心臓由来_cDNAライブラリーよりヒトAIIRの_cDNAをプローブとしてスクリーニングした。その結果、3側非翻訳領域の異なる2種類の_cDNAを得ることができ、哺乳類のものと65%の相同性をもつGタンパク質結合型受容体をコードしていることがわかった。得られた_cDNAを使ってノーザン法を行ったところ、哺乳類と異なりツメガエルでは心臓に圧倒的に存在すること、また動物細胞に形質導入しAIIと結合することを明らかにした。現在、腹側マーカーとして使用可能かどうか検討しているところである。またAII以外にも心房性ナトリウム利尿ホルモンの_cDNAのクローニングについても成功した。
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