研究概要 |
rasガン遺伝子産物及びそのスーパーファミリー(低分子量G蛋白質)は、種々の制御因子(GDS,GDI,GAP等)により、活性を制御されることにより生体内のいろいろな反応をコントロールしている。GDIは、低分子量G蛋白質のGDP解離を抑制する因子として精製単離されたことより、低分子量G蛋白質のGTP結合型である活性型への変換を阻害する負の制御因子の可能性が考えられる。一方、活性型とGAPとの相互作用を阻害する因子としても同定され、正の制御因子である可能性も、考えられる。動物細胞より取得したGDIを酵母細胞内で発現させる系を確立し、in vivoにおける作用を酵母細胞をモデルに解析した。酵母細胞内で動物細胞のrhoGDIを発現させると生育に関して負に働き、細胞は、芽を出せずに丸く大きくなり、生育できなくなる。この表現形を抑制する変異株を取得した。優性変異株が単離され、原因遺伝子を同定し相当する変異は、低分子量G蛋白質をコードするCDC42であることを明らかとした。この変異は、動物細胞のrhoGDIを発現していないと致死となる変異株であり、GDIの発現を止めると細胞は、芽を多数同時に出し生育できなくなる。また、変異部位を同定したところ、CDC42蛋白質のGTPaseドメインの中に存在した。rasなどの低分子量G蛋白質のこれに相当する変異は、GTPase活性を落とすため、低分子量G蛋白質を活性型に留める優性変異に該当する。これらのことより、GDIは、酵母細胞内でCDC42蛋白質に主に働き、CDC42蛋白質の活性を阻害することにより酵母の生育を抑圧していることが示された。したがって、動物細胞のrhoGDIは、酵母細胞内において、低分子量G蛋白質を負に調節する機能を持つことが、明らかとなった。
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