研究概要 |
本年度は、酵母キャッピング酵素alphaサブユニットの構造と機能を、遺伝子工学の手法を用いて明らかにすることを目的として研究し、以下の結果を得た。 1. alphaサブユニットは「酵素-GMP」反応中間体(E-pG)を経由する2段階でキャッピング反応を触媒するが、E-pGにおけるGMP結合部位Lys-70の役割を調べるため、Lys-70をsite-directed mutagenesis法を用いて、HisおよびIleに置換した変異体を作成した。これを大腸菌を用いて発現させ、E-pG形成活性を調べた結果、His,Ileいずれの置換体もE-pG形成はみられなかった。この結果は、70番アミノ酸がLysであることの重要性を示している。 2. alphaサブユニットの構造遺伝子CEGlに、HindIIIリンカーを用いてアミノ酸挿入を行い、大腸菌を用いて変異alphaサブユニットを発現させ、E-pG形成活性を調べた。その結果、10種類の変異体のうち、GMP結合部位近傍に挿入を行ったHinP184、alphaサブユニットの中央ややN末よりに挿入を行ったXba502、Dra534、C末端近くに挿入を行ったXho1189の4種類については活性は検出されなかった。従って、E-pG形成活性には少なくともこれら3つの領域が必要であることが示唆された。 3. CEGlは、酵母の生育にとって必須の遺伝子であり、CEGlを破壊した細胞株(cegl)は生育することが出来ない。そこで、リンカー挿入変異体をcegl株にプラスミドとして導入し発現させ、変異タンパク質の発現に依存した生育が観察されるかどうか見ることによって、変異タンパク質が酵母内で機能するかどうか検討した。その結果、in viteoにおいてE-pG形成が見られた変異体は、すべて生育したが、E-pG形成の見られなかった4種類については生育しなかった。このことは、E-pG形成とalphaサブユニットの機能との間に強い相関関係があることを示すものである。
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