研究概要 |
軟X線顕微鏡は、水分を含んだ生物試料でも高分解能で観察できることから生物学的応用に関して注目されているが、軟X線領域では空気による吸収が顕著でその光路中を真空にする必要があるため、真空中に水分を含んだ生物試料を保持するための試料容器(wet cell)が必要となる。 本研究では、厚さ0.1mumのSiN薄膜を2枚用いたwet Cellを設計製作し、機密性、生物試料の注入、及びWolterミラーを用いた軟X線顕微鏡における結像テストを行った。作製したwet Cellは、2枚のSiN膜を3mumのスペーサーを介して張り合わせ、その間に生物試料を挿入して両側からOリングで押さえて機密を保つ構造をしている。 波長約5nmのレーザープラズマ光源(A1ターゲット)を用いた結像実験では、水を含んだ赤血球及び大豆プロトプラストを比較的コントラスト良く結像させることに成功した1)。このWet Cellでは光学顕微鏡においても観察可能であり、光学顕微鏡及び軟X線顕微鏡像との比較も行うことが出来た。 生物試料と水とのコントラストがより大きい波長2.4nmにおいても、ゾーンプレートを用いた軟X線顕微鏡を用いて2枚のSiN膜を3mumのスペーサーを介して張り合わせたWet Cellをテストし、軟X線像を得ることに成功した2)。 これらの成果によって、実用的な軟X線顕微鏡用Wet Cellを作製するのに十分な基礎データを得ることができた。 1)S.Aoki et al.:4th International Conference on X-Ray Microscopy(September 20-24,1993, Russia)B8. 2)N.Watanabe et al.:4th International Conference on X-Ray Microscpy(September 20-24,1993, Russia)A9.
|