本研究は、中枢と同様な長期増強を起こしうると考えられ、かつ、単純な構造で特にシプナス前末端に対してのアクセスが可能なイセエビ歩脚の神経筋シプナスをモデルシナプスとして用いて、長期増強の基本メカニズムを探ることを目的として行われた。現在までに得られている主な成果および今後の課題を以下に記す。 1.イセエビ歩脚の神経筋シナプスにおいて、本科学研究費補助金により購入した微小電極増幅器によりシナプス後側である筋肉での応答を記録するのと同時に、別予算で今年度購入した単電極膜電位固定用増幅器によりシナプス前末端を電位固定しかつその応答を測定するシステムを確立させ、電位記録に成功した。また、同じく本科学研究補助金により購入した高輝度照明光源装置により、シナプス前末端へアクセスするために必要な解剖やガラス微小電極の刺入がしやすくなった。 2.イセエビの興奮性神経筋シナプスにおいても、中頻度の刺激を10分間程度与えることにより長期増強を起こさせることができることがわかった。その時の変化が、シナプス前末端側で起こっているのかシナプス後側で起こっているのかを調べるために、自発終板電位の分布を測定・解析している。 3.今後は、イオン泳動装置や圧入装置を用いてシナプス前末端に薬物を注入して応答の変化を測定したり、蛍光色素を注入してCa^<2+>等の動態イメージングを行うなどして、長期増強時の特にシナプス前末端における変化を解明していく予定である。
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