本研究は申請書の研究実施計画に沿って行った。その結果を以下に記す。 1.まずナノ秒レーザホトリシス装置を用いて、タコロドプシンのマイクロ秒からミリ秒領域における光反応中間体の解析を行った。光反応後0.1mus以内に生成するルミ中間体は2musの時定数でメソ中間体へ遷移し、メソ中間体は37musの時定数で最終光産物メタロドプシンへ遷移することが分かった。一方、紫外部の吸光度の時間変化から光受容したタコロドプシンはメソ中間体からメタロドプシンへ遷移するところで蛋白質上に大きな構造変化を起こすことが分かった。 2.蛍光レベルしたロドプシンを用いて光反応に伴うロドプシンのC末部位での構造変化を調べた。ロドプシンとメタロドプシンの蛍光スペクトルの比較から、光受容したロドプシンがメタロドプシンに変換するに伴い、蛋白質部分の構造変化が起きC末端上流部位が細胞質側に露出してくることが分かった。 3.ロドプシンを膜小胞に再構成し、牛網膜から精製したG蛋白質(Gt)のGTPgammaSの結合活性を調べた。光依存的にGTPgammaSの結合が促進されることからタコロドプシンは牛由来のG蛋白質を活性化できることが分かった。蛍光ラベルロドプシンでもG蛋白質活性化に影響を与えないことが分かった。 4.上記の結果を踏まえ本研究の最終目的であるロドプシン-G蛋白質相互作用の実時間計測すべく、ラベルロドプシンの蛍光の時間変化測定の検討を行った。現有のレーザホトリシスを改良して蛍光の時間変化測定を試みたが、時間分解測定を行うには蛍光強度が足りないことが判明した。現在この微弱な蛍光を検出するため光子計数法の導入を検討している。
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