本研究で使用した分子間力測定装置は、裏面に銀蒸着された厚さ数ミクロンのマイカの2平面間での繰り返し干渉光をモノクロメーターで分光し、分光された等高干渉縞をモニターしつつ圧電素子等の精密駆動装置を用いてマイカ表面間距離を制御できる機能を持っている。このとき生ずる干渉縞の変位から一方のマイカに装着されている板バネの変位を介して2平面間に相互作用している分子間力が測定される。なお、ここで用いられた装置において0.1nm精度の高分解能が当研究補助金によって購入された超高感度CCDカメラの導入により容易に達成することが可能になった。そしてこの改善により、運動性タンパク質の弾性率が精度良く測定され、これら酵素タンパク質が非常に柔らかい性質を持っていることを定量化することが本年度可能となった。本研究において、これまでATPを基質として加水分解反応を行うミオシンヘッドは、筋収縮の力発生の機構としてその弾性的性質が極めて重要であることが定説となっており、それと矛盾しない結果が得られた。現在、ATP存在下および非存在下での弾性的性質にいかなる差異があるか詳細に検討を試みている。また、吸着したミオシンヘッドの表面電荷ならびに表面電位を同時に解析してその静電気的性質の差異についても検討を行っている。 上記の実験結果に伴い、本年度は3件(第31回日本生物物理学会(名古屋大学)、細胞運動研究会(帝京大学医学部)、水の構造研究会(岡崎生理学研究所)の口頭発表を行った。そして、関係する研究発表は、次ページの3論文としてすでに印刷ないしは印刷中である。
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