これまでの研究により、初代肝細胞をI型コラーゲン上で培養すると肝特異的遺伝子群(アルブミン、チロシンアミノトランスフェラーゼ、アルギニノコハク酸リアーゼ、アルドラーゼB)の発現が減少することと、この細胞に腎臓由来のEHSサルコ-マから調製した細胞外基質(マトリゲル)を添加すると上記遺伝子群の発現の誘導されることが明らかになっている。 これらの結果をふまえ、今回マトリゲルに代えて肝臓の細胞外基質成分(肝バイオマトリクス)を添加したところほぼ同様の遺伝子発現誘導が観察されたことより、この発現誘導が生理的現象であることが示唆された。さらに、マトリゲル、肝バイオマトリクスとも添加量と肝特異的遺伝子の発現量との間に正の相関のあることが明らかになった。現在、この誘導に関与する細胞外基質成分を同定するための実験を企画している。 つぎに、遺伝子の転写速度を測定するため、核run-onアッセイの予備実験を行ったところ、90mmプレート10枚以上の細胞から調製した核を用いて実験を行う必要のあることがわかった。また、マトリゲルによる発現誘導が最も顕著だったアルドラーゼB遺伝子についてその誘導に関与する調節領域を推定するためのCATアッセイをおこなっているが、CATアッセイの感度が低すぎるためか現在までのところポジティヴな結果は得られていない。現在、CATアッセイに代えてルシフェラーゼを用いたアッセイ法の導入を検討中である。
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