大腸菌OxyRタンパクは、細胞が酸素ストレスに晒された時に発現する遺伝子群の転写活性化タンパクである。この研究では、酸化ストレス下で起こるOxyR蛋白の活性化は蛋白内のどの場所のどのような修飾によるのかを明かにすること、及び、活性型OxyR蛋白を還元して不活性型に変換する酵素(現在、同定されていない)を同定し、その働きを調べることにより、酸化還元による蛋白の機能制御機構を明かにすること目的とした。今年度は、次のような結果が得られた。 1)蛋白質内のメチオニンの酸化型であるメチオニンスルホキシドを還元する酵素であるメチオニンスルホキシド還元酵素の遺伝子をクローン化した。このクローン化した遺伝子を用いて、OxyRの活性制御にメチオニンの酸化型が関与している可能性を検討した結果、メチオニン残基の関与はないことが明かとなった。 2)OxyR蛋白によって発現の調節されている遺伝子を解析している過程でクローン化した遺伝子の内の一つについて塩基配列の解析の結果、この遺伝子のコードする蛋白は、蛋白質の酸化還元反応に関与している可能性のあることが解った。現在、この蛋白質がOxyR蛋白の活性制御に関与しているかどうかを調べるため、この蛋白質の増産、精製と、この遺伝子を欠く変異株の作成を行っている。 3)OxyR蛋白の機能ドメイン解析を行うため、oxyR遺伝子にランダムな変異を導入したライブラリーを作成した。このライブラリーの中から、レドックス応答能を失った変異体を選択した。現在このクローンの詳細な解析を行っている。
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