研究代表者は、酵母のマイナ-アルギニンコドンAGGを認識するtRNAが、ミトコンドリアに局在する熱ショック蛋白質SSC1の熱ショックによる合成誘導において重要な役割を果たしているという現象を見いだした。 研究代表者は、この興味深い現象の分子機構の解明を目的として研究を行ない、以下のことを明らかにした。 (1)このアルギニンtRNA遺伝子の欠失変異酵母株において、ミトコンドリアに局在するタイプのhsp60蛋白質の熱ショックによる合成誘導も起こらなくなる。即ち、核にコードされミトコンドリアに局在するタイプの熱ショック蛋白質遺伝子には共通の制御機構があり、このtRNAはその制御機構において重要な役割を果たしている。 (2)SSC1遺伝子のプロモーター領域の解析を行ない、転写の活性化に重要な領域を明らかにした。 (3)酵母Ty1レトロトランスポゾンがコードし、トランスポジションに必須なTYA1-TYB1遺伝子が発現し遺伝子産物が合成される際、AGGアルギニンコドンが関わるフレームシフト翻訳制御機構が重要な働きをしている。研究代表者は、AGGアルギニンtRNA遺伝子欠失変異酵母株中で、この翻訳制御機構を詳細に解析し、その分子機構に関する論文を発表した。
|