研究概要 |
本研究ではHBP-1a,HBP-1bの転写因子としての作用スペクトラムを明らかにするために両因子の機能ドメインの同定を試みた。両因子はbZIPモチーフをDNA結合ドメインとして有することが特徴だが、他にもHBP-1aでは、N末端側からA)プロリンrich領域、B)カゼインキナーゼII(CKII)の基質と成り得る領域(=CKII領域)などが、また、HBP-1bでは、N末端側から C)cdc2キナーゼの基質と成り得る領域、D)グルタミンrich領域などが、特徴的である。そこで、まず、これらのモチーフを酵母の転写因子GAL4のDNA結合ドメインとの融合タンパク質として発現するようなキメラ遺伝子を作成し,CaMV 35Sプロモーターの下流に繋いで植物細胞内で機能するエフェクター遺伝子を作成した。次に、シス配列としてGAL4の結合配列を上流にもつヒストンH3最小プロモーターにGUS遺伝子を繋いだリポーター遺伝子を作成した。これらをタバコ培養細胞BY-2のプロトプラストにエレクトロポレーション法により導入して、GUS活性を指標に各エフェクター遺伝子がリポーター遺伝子に及ぼす影響を調べた。その結果、HBP-1bに関しては今のところ明確な結論は得られてはいないが、HBP-1aに関して以下のことが明らかとなった。i)CKII領域単独ではプロモーター活性に何も影響を与えない。ii)bZIP領域はプロモーター活性を抑制する。この抑制はb領域のみでもみられた。iii)プロリンrich領域全体では、エフェクターの量を増やすに従い、プロモーター活性を強く抑制した。iv)プロリンrich領域を2等分したN末端側(NP)およびC末端側(PC)はそれぞれ、プロモーター活性を強く促進した。この事実は、プロリンrich領域の活性が何らかの修飾によるコンホメーションの変化により調節されている可能性を示唆している。
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