研究概要 |
C.elegansは、ゲノムDNAの大部分がYAC及びコスミドの整列ライブラリーとしてクローニングされ、既に全塩基配列決定が開始されている。また全cDNAの単離も精力的に進められており、最もゲノム解析の進んだ生物種の一つである。次の段階としては、遺伝子を機能へと結び付けることが重要であり、その一手段として遺伝子破壊による表現型の解析が考えられる。C.elegansのmutator株は約300コピーのトランスポゾンTc1を持ち、様々な遺伝子への挿入突然変異体が知られている。そこで、mutator株を約100個体ずつプールして培養し、そのF1集団より作成した突然変異体バンクより、PCR法を用いて目的遺伝子にトランスポゾンの挿入した個体を見いだす方法を開発した。 mutator株RW7097(mut-6)より作成した768プール(総計約80,000個体に相当)のバンクでは、調べた13遺伝子に対し7遺伝子で9種のTc1挿入株を得た。mutator株MT3126(mut-2)の192プール(総計約20,000個体に相当)よりなるバンクからは、調べた6遺伝子中4遺伝子において計5株を得ることができた。単位ゲノム領域への1プール当りTc1挿入株を得る割合はMT3126株の方が高いことが明らかとなり、このバンクでは約4kbpのゲノム領域に対し1個のTc1挿入株が期待できる。C.elegansの遺伝子の多くは4kbp以上の大きさを持つので、ほぼ任意の遺伝子に対してトランスポゾン挿入株を得ることができると思われる。Tc1挿入株中unc-22遺伝子への挿入ホモ接合体では特徴的な表現型(twicher)を見いだせた。それ以外ではイントロンへ挿入した場合を含め、生存率、形態、運動には異常を見いだせなかった。これらTc1挿入株より確実な遺伝子破壊個体を得るため、Tc1の転移に伴い近傍領域の高頻度な欠失が生じることを利用して遺伝子欠失変異体を作成し、詳細な表現型の解析が必要である。
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