研究概要 |
1)C型肝炎ウイルス(HCV)-RNAの5'側非翻訳領域(5'UTR)を上流から削ったdeletion mutantを作製し、internal initiationに必要なRNA領域(internal ribosome entrv site;IRES)を決定したところ、核酸番号111(高見沢らに従う)以降が活性に必要であった。またIRESの2次構造をコンピューターで計算し、得られた各シュテムループ構造に相当する領域を削っても活性は消失し、IRES内のどの領域も必須であった。 2)日本に存在するHCVは、核酸配列の相同性から大きく2群に分けられるが(グループI、グループII)グループIIに属するクローンの翻訳効率はグループIのものより約3倍高い事を報告してきた。この効率の差はHCV-RNA5'UTR内の核酸配列の違いに規定されていると考え、I,IIのキメラクローンを用いて検討したところグループIのどの配列をグループII型に変えても効率が上昇する事が明らかとなった。また核酸番号98、110の様に僅か1塩基の変化で効率を上昇させる事も明らかとなった。我々はHCVを簡便かつ正確にグル-ピングしうるアッセイ系も確立したが、これを用いた疫学調査ではグループIHCVが日本では約70%を占める事が判明した。グループIHCVはinternal initiationの効率が抑制されたため持続感染に有利となった可能性が考えられ、現在詳細を検討中である。 3)HCV-IRESには、ピコルナウイルスのIRESで発見されたpolyimidine-tract-binding protein(PTB)と考えられる宿主因子が結合していた。そこで、splicing factorの一種とされるPTBの遺伝子をクローニング後発現精製し、特異抗体を得た。この抗体を用いてPTBがHCVのinternal initiationにどの様に関与しているか、現在検討を進めている。
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