ミオシンの細胞内局在化とそれを制御する細胞内シグナルについて、研究を進めた。細胞性粘菌の走化性物質であるcAMPで、細胞を刺激すると、レセプターを介して一連の細胞内シグナル伝達が作動され、同時にミオシンの局在変化が起こる。ミオシンを移動させるシグナルを明らかにするため、シグナルの一部欠損の突然変異体を用い、走化性刺激の際のミオシンの移動の有無を調べたところ、cGMP形成能の低いもの、また細胞内Caイオンの変化しない株でミオシンの移動が見られなかった。次に、Caイオノフォアを用いて、細胞内のCaイオン濃度を人為的に上昇させると、ミオシンの移動を誘起できた。また、cGMPでもミオシンの反応を引き起こせた。しかし、これら両者で反応に違いが見られ、Caイオンは少なくとも細胞膜から内質へのミオシンの移動に関与することが明らかになった。細胞局所へのミオシンの局在化は、いずれかのシグナルが細胞内で局所的に高濃度になったことに起因すると考え、顕微鏡下でマイクロキャピラリーを用い、局所的に細胞にシグナルを与え、これによりミオシンが移動するかを蛍光抗体法で調べるための条件を整えた。ミオシンのリン酸化部位を欠く変異体をもちいた実験の条件も確立した。
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