体細胞分裂期及び減数分裂期の出芽酵母細胞からクロマチン画分を単離し、球菌ヌクレアーゼで部分消化を行った。続いて、減数分裂期の相同組換えホットスポット(頻発部位)であるARG4及びCYS3遺伝子座のプローブにより間接末端標識法を行い、体細胞分裂期と減数分裂期の相同組換え開始点近傍のクロマチン構造ほ解析した。その結果、両者ともヌクレオソームの配置や超感受性の場所についてはほぼ同じであったが、組換え開始点のDNA二重鎖切断部位に一致する箇所に超感受性部位が存在し、その感受性が減数分裂の進行に伴って数倍増大する現象が観察された。こり増大は半数体では起こらないので、減数分裂に依存しており、二重鎖切断に先行して起こることから二重鎖切断の形成に何らかの関連があるものと思われた。そこで、ARG4遺伝子座の組換え開始点上に存在する二重鎖切断に関するシス作用配列の改変体を用いた実験を行ったところ、球菌ヌクレアーゼに対する感受性の程度・位置が二重鎖切断の程度・位置と有意な相関を有することが明らかになった。以上の結果は、二重鎖切断が生じる部位で球菌ヌクレアーゼ対する受容性を増大させるようなDNA構造変化が起こっており、この二重構造変化が二重鎖切断の位置や頻度の決定に重要な役割を果たすことを示唆している。ただしこの増大は数倍程度であり、また体細胞分裂期にも同様な超感受性部位が認められるので、エンドヌクレアーゼなどの組換え開始酵素の活性化も、相同組換え活性化に必須であると考えられる。その他としては、染色体上でARG4遺伝子の向きを逆転させた改変体を用いた解析から、二重鎖切断に関するシス作用配列はすでに形成されたヌクレオソーム二よって不活性化されることも示唆された。以上の結果は、減数分裂期の組換え開始がクロマチンレベルでの制御をうけていることを示唆している。
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