視床の運動核である視床外側腹側核において、小脳核からの入力を受け、大脳皮質運動野に投射する単一神経細胞上の神経終末の空間的な分布様式を明らかにすることを目的として研究を行った。ネンブタール麻酔ネコの、視床外側腹側核の皮質投射細胞を電気生理学的に同定し、HRPを電気泳動法により細胞内注入した。DAB反応後、エポンに包埋したHRP標識細胞を中心に超薄連続切片を作成し、GABA抗体による包埋後染色法を行ってから、電顕にて観察を行った。250枚の連続切片観察により、HRP標識された細胞の樹状突起とそこに終止する神経終末を、コンピュータグラフィクスを用いて三次元的に再構築し、この再構築により、標識された樹状突起は、一次から三次まで同定され、それぞれに接触する神経終末の空間的な分布様式の解析が可能となった。神経終末は、その大きさ、シナプス小胞の形状、GABAとの免疫反応性により、大型で、丸い小胞をもつLR型、小型で、丸い小胞をもつSR型、GABA陽性で、やや扁平な小胞をもつP型に分類できた。それぞれの樹状突起上の分布は、P型は、どの部分にもまんべんなく分布し、LR型は、主として、一次、二次樹状突起に多く、SR型は、遠位になるにつれて数を増しており、三次樹状突起に多く、二次樹状突起には存在したが、一次樹状突起には認められなかった。視床皮質投射細胞が、小脳核の刺激により、数mVに達する大きなEPSPを生じることから、細胞体近傍のLR型の終末が、小脳核からの軸索終末に対応すると推定され、従来の所見を裏付ける結果となった。また、GABA陽性終末の起源については、視床網様核由来、核内の介在ニューロン由来等考えられ、さらに解析を加える予定である。
|