1.新生期(生後0、1、2、3、7日)のラットの上丘に逆行性蛍光標識物資(Fluoro-Gold)を注入し、1日の生存期間の後、線条体での標識神経細胞の分布を調べた。生後1、2、3日の線条体では多数の標識細胞がパッチ状に分布していたが、生後4、8日の線条体では標識細胞はみとめられなかった。 2.生後0日の上丘にFluoro-Goldを注入したラットを生後4、8日(線条体上丘投射の消失時期)まで生存させた場合、生後4日の線条体ではまだかなりの数の標識細胞がみとめられたが、生後8日の線条体では標識細胞はまったくみとめられなかった。 生後0日の線条体に順行性蛍光標識物質(Dil)を注入し、1日の生存期間の後、上丘での標識神経線維の分布を調べた。生後1日の上丘で標識線維がその中間層(第4、5層)にみとめられた。 逆行性蛍光標識法とチロシン水酸化酵素を用いた蛍光免疫組織化学とを組み合わせた結果、線条体上丘投射細胞の分布が、線条体のドーパミン神経終末のそれと一致することがわかった。 以上の結果から、以下のことが考えられる。 1.ラットの脳の発達過程において一過性に出現する線条体上丘投射は生後1週間以内で消失し、その消失機序として起始細胞そのものの死が関与していると考えられる。 2.線条体上丘投射細胞は線条体のpatch compartment(ドーパミン神経終末の分布領域)に一致して分布する。
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