線条体の内部回路およびそこへの黒質からの入力の新生児期における可塑的変化を検討するための基礎的情報を得る目的で、P物質受容体のラットにおける生後発達を、P物質受容体に対する特異抗体を用いて免疫組織学的に検索した。P物質受容体免疫活性は生後2日目より徐々に発現しだし、無棘細胞におけるP物質受容体免疫活性は生後8から14日目にかけてその強さを増していって、成体のパターンを示すようになった。その一方で、生後2日目から14日目にかけてP物質受容体免疫活性は一過性のパッチ状発現を線条体内側部において示すことが本研究で明らかになった。このパッチのなかには、P物質受容体免疫陽性の小細胞が密集して存在しており、逆行性標識法と組み合わせた実験により、これらの細胞群のすくなくとも一部は黒質への投射細胞であることが見出された。P物質受容体免疫活性は成体においては線条体介在ニューロンにおいてのみ認められることが既に知られているので、この現象は新生児期においてのみみられる特異的なものであると考えられた。さらに免疫二重染色法により、P物質受容体免疫陽性パッチは生後一過性に見られるチロシン水酸化酵素免疫活性やP物質免疫活性のパッチ状分布に一致することも明らかになった。今後、今回見出されたP物質受容体免疫陽性のパッチが黒質緻密部や大脳皮質からの線条体入力の遮断、あるいは各種薬剤の投与によりどの様な変化を示すかを検討していく予定である。
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